ポラスグループ・中央グリーン開発(株)は15日、埼玉県越谷市内の分譲戸建て「越谷市南荻島プロジェクト(仮称)」(総区画数64区画)開発予定地にて、既存建物の「棟下式(むねおろしき)」を開いた。
「棟下式」とは、役割を終えた建物の解体前に感謝を示す「お別れ会」を意味する、上棟式とは逆のイベントだ。
計画地は、東武伊勢崎線「北越谷」駅から徒歩13分の企業の元研修所で、総開発面積は1万2,396.32平方メートル。既存建物は、1969年に竣工した研修棟で、鉄筋コンクリート造、延床面積1,717.72平方メートル。宿泊室が約70室あり、会議室や食堂、大浴場などを備えていた。
「現地を視察した際、立派な建物で残置物も非常に多かったため、『このまま取り壊すのはもったいない』と感じました」(同社経営企画課コミュニティ企画係係長・横谷 薫氏)という。リノベーションによる再活用を検討したが、建物の老朽化が激しい上に、宿泊室に水回りもなく、解体がベストという結論に至った。ただ、研修棟に敷設しているグラウンドは、地域の運動会の練習やゲートボール大会などの会場として地域住民にも親しまれていたことから、今回のイベントを発案。解体前に地域住民に開放し、各種イベントを行なうことにした。
イベント開催に当たり、東京都調布市発祥の野外シネマイベント「ねぶくろシネマ」(実行委員長・唐品知浩氏)とコラボレーション。「棟下式」の発想は、唐品氏がもともと抱いていたものだという。「不動産はやや“お堅い”イメージがあり、もう少し一般の方々が気軽に不動産に向き合えるようにしたかった。その一環として、今回のようなイベントを考えました。古民家の解体などでは行なうこともありましたが、ディベロッパーが行なうのは今回が初めてです」(唐品氏)。
イベントでは、既存建物の各宿泊室に置いてあるテレビや食堂の食器・什器、会議室の長机などといった残置物を希望者に引き取ってもらう“お宝探し会”や、建物の壁をキャンバスに見立てた落書き会、竣工式や上棟式などの際に行なう清祓式、餅撒きなども行ない、夜にはグラウンドで映画を上映した。
イベントにはファミリーから高齢者まで幅広い世代の地域住民700人超が参加。残置物の多くがリユースされたほか、室内への落書きにとどまらず、建物外にも落書きの範囲が広がるなど盛況だった。
中央グリーン開発取締役事業部長の戒能隆洋氏は、「予想以上に地域住民の方々に集まっていただけた。残置物を引き取ってもらうことで、建物の記憶を地域に残すことも狙い。当社にとっても、ここで住宅開発を行なうことを、広告ではない手段で、早い段階で地域に知らせることができるというメリットがある。このような既存建物への感謝を示す“棟下式”を一つの文化として発信していきたい」と話した。