ソニー不動産(株)代表取締役社長の西山和良氏は21日記者会見し、不動産流通業参入の狙いや、今後の事業戦略等について語った。
同社は、「日本の不動産業界に公平性、合理性(効率性)、専門性(信頼性)を持ち込み、消費者志向の高品質なサービスを合理的な価格で提供し、顧客満足度を追求する」をコンセプトに、2014年4月に設立。不動産業界や生命保険業界の経験者などを中心にエージェントを募集。社員数約50名で、8月1日から1都3県を対象に不動産仲介業務、賃貸管理(PM)業務を開始した。
同社の不動産仲介サービスは、(1)売却と購入とでエージェントを分け、顧客の利益相反となる「両手仲介」を禁止する、(2)仲介手数料はアウトソーシングやIT化等による効率化を進め、営業活動費などにかかった分だけ請求する、ことが特徴。
売却エージェントと購入エージェントは席を分けるほか、データベースにもファイアーウォールを設ける。将来的には、オフィスも分ける方針。
手数料体系は、「走った分だけ」で成功したソニー損保(株)の通販型自動車保険のノウハウを参考に、物件種別・価格や担当エージェントのランク、成約までの所要時間、案内物件数などに応じて法定上限の範囲内で料金を変動させる。エージェントは、営業スキルに基づき「トップエージェント」「シニアエージェント」「エージェント」の3つにランク分け。顧客の要望に応じてエージェントを選べるようにする。営業成績に加え、顧客からの評価を重視。年に1回評価替えを行なう。
PM事業も、戸当たりの基本手数料を設定した上で戸数に応じて手数料が変動するシステムを導入。手のかかる入居者募集や建物・設備管理、トラブル対応などは専門提携業者にアウトソーシングし、オーナーの収益向上提案に注力する。また、ソニー生命(株)のライフプランナーと連携し、資産活用案件等を取り込んでいく。
今後は、営業体制強化に向け、エージェントの採用拡大に注力する。店舗については、むやみに増やすのではなく、都心部を中心にブランドイメージが構築できるエリアを厳選し出店する。いずれも、目標は非開示。
8月1日の営業開始から、すでに23区を中心に約350件の反響を得ているという。今後は、仲介・PMに加え、ソニー生命やソニー銀行(株)、ソニー損保とのシナジーによるコンサルティング事業等の拡大に注力。来年度には黒字転換し、18年度の上場、20年度の売上高500億円を目指す。
西山氏は会見で「新たなビジネスを立ち上げるのは、SONYのDNA。私は不動産業界経験はないが、消費者の立場で見るとその利益にかなってないことがたくさんある。そうした部分に最新のオペレーションを導入することで、新しい価値観・サービスが提供できると考えている」と抱負を語った。
また、独自のビジネスモデルについては「やみくもに売り上げ・利益を追求するのではなく、あくまで顧客満足度ナンバー1を目指すのがすべて。両手仲介でもいいというお客さまもいるが、大事なことは透明性と信頼性。手数料についても価格破壊ではなく、あくまで高品質なサービスを合理的な価格で提供するという考えで、大手他社と共存共栄を図る。大手流通事業者のトップからも『われわれも学ぶことはある。業界全体のレベルアップのために、新風を吹き込んでほしい』と激励された」とした。