2025/02/14 18:00更新
「引取」「リースバック」トラブル防止へ

多岐にわたるテーマについて活発な意見交換が行なわれた


 国土交通省は14日、社会資本整備審議会産業分科会不動産部会(部会長:明海大学不動産学部長・中城康彦氏)の42回目の会合を開いた。今回は、「不動産業による空き家対策プログラム」の進捗状況や不動産取引に係る新たなサービス形態等に関して意見を交わした。


 1つ目のテーマである「不動産業による空き家対策推進プログラム」について、業界団体による総合的な相談窓口整備や空き家等に係る媒介報酬規定の見直し、不動産業と地方公共団体の連携の現状を同省が説明。媒介報酬規定の見直し効果については2024年7月の制度開始以降、「成約価格800万円以下の宅地建物」の成約件数が全国ベースでも地方部に限っても5ヵ月連続で前年同月を上回ったことなど、一定の成果が認められることが示された。不動産業と地方公共団体の連携についても、5つの事例を紹介しながら、官・民の役割分担や、福祉など空き家担当部局以外との連携も必要だと指摘した。


 委員からは「空き家対策推進プログラムについては、不動産事業者を地域価値向上のためのプレーヤーとして位置付けたことをはじめ、高く評価できる」「媒介報酬の見直しは、宅建事業者の取り組み姿勢を前向きにしており、業界団体の物件サイトでも800万円以下の物件の登録件数がかなり増加した」「空き家所有者は決断までに時間がかかるので、気軽に相談できる窓口は必要。また、独居高齢者など、空き家『予備軍』の対策も必要になるのでは」といった声が挙がった。


 続いて、近年登場した不動産業に係る新たなサービスに関して、「不動産の引取サービス」や「住宅のリースバック」等について説明。「引取サービス」とは、不動産の所有者が金銭を支払って事業者が当該不動産を引き取るもので、宅建業法等による規制が及ばないケースも想定される。同省では、「契約に基づいて金銭を支払っても事業者が所有権移転登記を行なわない」「本来であれば市場価格で売却可能なのに、引取サービスにまわされる」「引取後の事業者の適正な管理が確保されるか」といった懸念を指摘した。
 また、「リースバック」については、22年に消費者向けのガイドブックを発行したものの、依然として国民生活センター等への相談件数が増加するなどトラブルが絶えない実態を説明。同省の調査によれば、参入事業者が増加する見込みであることや、契約形態や買い取った事業者の運用方法も多様であることなどから、「利用者に対してより丁寧に説明等を行なうよう事業者に呼び掛ける必要がある」などとした。


 委員からは、引取サービスについては「国の相続土地国庫帰属制度の穴埋めとして有用といえる。しかし、トラブルの懸念もあるので今のうちから対応を考えておくべきでは」「コンパクトシティ実現に向けた居住誘導を考えると、マイナス価格での取引は今後増えていくと考えられるので、実態を注視していくべき」などのコメントが上がった。また、リースバックについては「消費者保護に向けて法規制も必要では」「例えば3年の定期借家契約、賃貸人による修繕義務がないなどといった契約内容と条件によっては、賃貸借契約ではなく『明け渡し期限が3年後の売買契約』と解釈されることもある。契約類型をしっかり分析し、契約類型ごとにどのような重要事項説明が必要なのか、ガイドラインが必要ではないか」などといった声も。


 このほか、賃貸住宅管理業法の施行状況や、不動産分野DXの推進について発表があり、同省では、不動産業務におけるDXによる生産性向上の効果を検証する実証事業をスタートする予定だという。



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