(株)ニッセイ基礎研究所は9日、「JREITの鑑定キャップレートはどこまで上昇するか」と題したレポートを発表した。不動産市況の悪化に伴い、下落の続くJREITの不動産鑑定価格の変化率とキャップレートの要因を分析したもの。
2009年上期におけるJREIT不動産鑑定価格は、08年下期に比べオフィスで6.5%の下落、住宅で5.8%の下落、商業で7.8%の下落となっており、リーマン・ショックを機にすべての価格が大きく下落に転じる結果となった。
この下落要因をキャップレートおよびネットキャッシュフロー(NCF)の変化率で分析したところ、オフィスに関しては06年下期以降はキャップレートとNCFが同程度で推移しており、その寄与は半分ずつという結果となった。
一方、住宅と商業の不動産鑑定価格の変化はそのほとんどがキャップレートの変化によるものであり、その寄与率は直近の2009年上期で、住宅価格が86%、商業価格が94%と、キャップレートの変動に大きく起因していた。
また、キャップレートの変動要因を知るために、立地や規模、築年といった不動産の特性の違いを調整した指数を用いて分析したところ、オフィス、住宅、商業のキャップレートは08年上期を底に上昇に転じ、オフィスでは1年間に25bp(ベーシスポイント、1%の100分の1)、住宅では47bp、商業では51bp上昇していた。
一方、キャップレートの変動要因をみると、オフィスは日銀短観における金融機関の不動産への貸出態度判断DIと強い相関関係があり、住宅・商業では、半期前の日銀短観の不動産貸出態度DIと相関が高かった。不動産貸出態度DIとNCFの変化率、オフィスのキャップレートなどを説明変数として今後の予測を行なった結果、キャップレートのピークは住宅では09年度下期、商業では10年上期になると推計された。また、ピーク時の住宅キャップレートは5.2%(09年上期比13bp上昇)、商業キャップレートは5.6%(同108bp上昇)という結果が得られた。
同レポートでは、「住宅や商業の不動産価格およびキャップレートは、その安定したインカムゲインよりもむしろ、オフィス市場との関連が強く、オフィスビル投資のサブセクターとして投資や価格付けが行なわれていた可能性が高いように思われる」としている。