記者の目

2010/6/2

働くママの生活実態は?

働くママをサポートする「ママサポ・プロジェクト」が発足

 男女雇用機会均等法が成立して25年、育児休業法が成立して20年。女性の社会進出はめざましく、特に、近年では不況の影響もあってか、「産後も働きたい!」と考える女性が増え、専業主婦の割合は減少しているという。  そうしたなか、4月21日、働くママをサポートする「ママサポ・プロジェクト」(発起人:(株)ワークライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵氏、日本女子大学人間社会学部社会福祉学科 准教授 永井暁氏)が発足。子育てや女性のキャリアに関する情報発信や、具体的なサポート活動を通し、働くママを取り巻く環境づくりの実行とその効果の検証、さらに賛同企業と協同で、「はたらくママ」をサポートする商品の開発、知識の共有などを行なっていくという。  本レポートでは、同プロジェクト発足セミナーの内容をもとに、「はたらくママ」の実態について考えてみようと思う。

「ママサポ・プロジェクトメンバー」左より、アップリカ・チルドレンプロダクツ(株)本部長の山田 実氏、東京ガス(株)グループマネージャーの佐藤弘直氏、日清食品(株)ブランドマネージャーの木所敬雄氏、有楽土地(株)開発本部販売推進部長の石井裕子氏、(株)ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵氏、日本女子大学准教授の永井暁子氏
「ママサポ・プロジェクトメンバー」左より、アップリカ・チルドレンプロダクツ(株)本部長の山田 実氏、東京ガス(株)グループマネージャーの佐藤弘直氏、日清食品(株)ブランドマネージャーの木所敬雄氏、有楽土地(株)開発本部販売推進部長の石井裕子氏、(株)ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵氏、日本女子大学准教授の永井暁子氏
資料:「はたらくママの実態と意識に関する調査」(ママサポ・プロジェクト)をもとに編集部作成(以下同)
資料:「はたらくママの実態と意識に関する調査」(ママサポ・プロジェクト)をもとに編集部作成(以下同)

母親が働くということへの認識の変化

 「父親が外で働き・母親が家を守る」というのは、人によって賛成・反対はあれども、日本人に昔から根付く固定観念の一つではないだろうか?しかし、これは父親一人が働き、慎ましくも妻と子供2人くらいは養うことができた団塊の世代までの話であるようだ。今、この概念が崩壊しつつあるという。
 というのも、不況による年収減や雇用不安に加え、養育・教育費の高さが子育て家庭の家計を圧迫する。そうした状況下で父親・母親の働き方は変化の最中にある。

 女性が産後も働くことは、女性の「社会進出」「キャリアアップ」と捉えられることが多かったが、今は家計を支えるために、仕事に就いているケースが多いという。実際、報酬面に目を向けると、女性が定年まで正社員として働き続ける(産休・育児休暇は取得)場合と仕事を辞め派遣・パート社員として働いた場合の生涯賃金では、おおよそ5,000万~2億円ほどの差がでるのだとか。マンション1戸くらいは購入できてしまうのだ。

 キャリアアップのために働いている女性は勿論のこと、このように家計を支えるために働く女性たちが増えてきたことから、「はたらくママ」を支えるサポートは今後ますます必要となってくるだろう。


「はたらくママ」は忙しい

 同プロジェクトの発起人でもある日本女子大学人間社会学部社会福祉学科准教授の永井暁子氏が監修した「はたらくママの実態と意識に関する調査」の調査結果をみてみることとする。同調査は「はたらくママ(フルタイムで仕事をしているママ)」、「はたらくママの夫」、「専業ママ」、「専業ママの夫」、「夫婦のみ世帯の妻」の5セグメントについて各300名づつ合計1,500名に対しインターネット調査を実施したもの。

 同調査結果によると、「はたらくママ」は、他のセグメントと比べて、「毎日忙しい」と感じる割合が高く、約半数に上るという(図表1)。
 そのような忙しい環境下において、ストレスや充実感に対する傾向を見てみると、「ストレスがたまり、イライラしている」という状況にあてはまる「はたらくママ」は14%と比較的少ない、一方で「専業ママ」は29%と最も多くなる(図表2)。
 また、「生活が充実している」という状況にあてはまるかの設問では、「はたらくママ」が21%と最も多く、一方で「夫婦のみ世帯の妻」、「専業ママ」はそれぞれ14%、15%と少ない(図表3)。
 「はたらくママ」は忙しいと感じながらも、ストレスは溜めておらず生活が充実していると感じている実態は意外であった。一方で、比較的時間の拘束は少ないものの、ストレスを感じ生活が充実していないと感じている「専業ママ」が多いことに驚いた。


「はたらくママ」に必要なもの

 「はたらくママ」たちにとって必要なものとは何だろうか?
 同調査で「自分の時間を増やすために、利用しているまたは今後利用したいサービスは何ですか?」という設問に対し、「利用しているまたは利用したいサービスはない」の回答が最も多く33%。忙しさを解消できるサービスはあまりないようだ。ただし、「通勤途中にある保育所」30%、「ネットスーパー」27%と必要なサービスも見えてきた(図表4)。
 仕事を持ちながらも育児や家事に忙しい「はたらくママ」には“時間”を有効に使えるサービスが必要といえる。
 
 同プロジェクトの賛同団体で、不動産会社5社JVによるマンションプロジェクト「戸田公園プロジェクト」(埼玉県戸田市、総戸数923戸、竣工:第I敷地11年8月下旬、第II敷地12年8月下旬)では、「はたらくママ」をサポートする総合的なサービスを提供していくとしている。具体的には、家事を軽減する間取りや設備仕様に配慮するほか、子どもを介したママたちのコミュニティを形成する共用施設なども設置する予定だとか。また、「はたらくママ」のサポートはマンションディベロッパーだけで可能となるものではないため、今回「ママサポプロジェクト」に賛同している各社と連携して“住”だけでなく生活の総合的な面でもサポートしていく方針だ。


「はたらくママ」をサポートする住まい

 「戸田公園プロジェクト」の他にも、現在ハウスメーカー、ディベロッパー各社が、働くママをサポートする取組みを積極化している。例えば、積水化学工業(株)は、注文住宅「新ハイムbj」(09年4月24日発売)にて、子育て主婦層にとってストレスフリーなすまいづくりを強化した商品を提供しており、特に間取りの可変性や収納にこだわった商品となっている。また、新日鉄都市開発(株)では「ワーキング・ママ支援プロジェクト」(09年4月22日発足)を立ち上げ、子育てしながら働く女性や家族を対象に、生活や住まい等に関するアンケートやモニター調査、セミナー、イベント等を実施、ワーキング・ママのライフスタイルやニーズ等の調査を行っている。

 「はたらくママ」をサポートする住まいについては、さまざまな企業が、調査・研究などを活発化してきている。冒頭で述べたとおり、社会構造の変化に伴い母親が働かざるを得ない家庭が増えてきており、母親が働くということに対する認識は変化しているのだ。多くの業界が、サポートビジネスを積極化するなかで、「住まい」「住環境」においても、今後、各方面からのアプローチが進展するであろうと実感している。(tam)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【関連ニュース】
“はたらくママ”をサポートする「ママサポ・プロジェクト」発足(2010/4/22)

子育て世帯へ向けた、住宅事業40周年記念商品「新ハイムbj」発売/積水化学工業(2010/4/20)
子育てをしながら働く女性・家族のための支援プロジェクト設立/新日鉄都市開発(2009/4/24)

新着ムック本のご紹介

ハザードマップ活用 基礎知識

不動産会社が知っておくべき ハザードマップ活用 基礎知識
お客さまへの「安心」「安全」の提供に役立てよう! 900円+税(送料サービス)

2020年8月28日の宅建業法改正に合わせ情報を追加
ご購入はこちら
NEW

月刊不動産流通

月刊不動産流通 月刊誌 2025年1月号
地域で目立つ企業になるには…
ご購入はこちら

ピックアップ書籍

ムックハザードマップ活用 基礎知識

自然災害に備え、いま必読の一冊!

価格: 990円(税込み・送料サービス)

お知らせ

2024/12/23

「記者の目」を更新しました


テナント間で『向こう三軒両隣』」を更新しました。ご近所さんと助け合いながら暮らす大切さや文化を表す言葉、「向こう三軒両隣」。近年この言葉が、商業施設のテナント間でも意識されるように。ビジネスライクな関係性を抜け出し、有事の際にも備えた関係性構築の大切さが再認識されています。