アパグループの投資戦略
アパホテル(株)は2010年12月21日、「アパホテル<日本橋浜町駅南>」(東京都中央区、客室数159室)を開業、同日開業披露式典を執り行なった。 同ホテルは、アパグループが同年4月1日より始動した中期5ヵ年計画「SUMMIT5」の第1弾。同計画では日本の中心である皇居を取り巻く東京都心3区(千代田区、港区、中央区)を中心にホテル保有棟数NO.1をめざし設計・建築を進めている。 同ホテル開業以降も、10年12月中に「アパホテル<富山駅前>」(富山県富山市、客室数246室)、「アパホテル<八丁堀駅南>」(東京都中央区、客室数135室)を開業させ、その後も、11年にかけて東京都内11ヵ所、名古屋市、大阪市でそれぞれ1ヵ所を続々開業する予定と、10年末以降の躍進ぶりが注目される。
■中期5ヵ年計画「SUMMIT5」の第1弾 「アパホテル<日本橋浜町駅南>」開業
同ホテルは、都営新宿線「浜町」駅徒歩6分、都営浅草線・東京メトロ日比谷線「人形町」駅、東京メトロ半蔵門線「水天宮前」駅からも徒歩圏内と交通至便なエリアに位置する。鉄骨造・一部鉄筋鉄骨コンクリート造、地上11階建て。
外観デザインは隅田川沿いの景観を生かし、南東角面にルーバー、その上に丸窓を配置したインパクトのある建物だ。
また、屋上には熱交換塗料を塗布、客室や共用廊下の照明器具の一部に電球型LEDを採用、全室に省エネスイッチを採用するなどエコへの取組みも充実させた。
さらに、今回アパホテルで初めて自動精算機を導入し、宿泊客の精算時におけるフロントの待ち時間短縮、人員の業務の最適化を図る。
今回初めての導入となった自動精算機であるが、すでに1984年に同社が初めて手がけた「アパホテル<金沢片町>」(石川県金沢市、客室数132室)で導入した実績を持つ。しかし、やむなく撤去せざるを得ない状況になった経緯がある。
「実は『新宿ワシントンホテル』と共同で自動精算機を導入したのですが、キャッシュディスペンサーにお金を払うという精算方法に、お客さまは馴染みがなかったようです」と、同グループ代表の元谷 外志雄氏は当時の先駆的すぎた試みを懐かしむ。
客室は全159室のうち、シングル137室、セミダブル20室、デラックスツイン1室、トリプル1室で、シングルの料金は1万1,000~1万2,000円(税サ込)。なお、11年3月末まで開業記念特別料金として、シングルに6,800円(税サ込)で宿泊できる。
また、標準の客室以外にも、テンピュール社製のマットレスを採用したベッドや金庫を置いた「ビジネスルーム」、浴室から隅田川が見える「ビューバスルーム」などを用意、ビジネスとレジャー双方の宿泊需要の取り込みを図っていくという。
■アパグループの躍進はどこまで続くのか?
東京都心を中心とした、ホテル開発を続々と進める同社。この背景には、「地価」「建築費」「金利」の3要素が“低い”タイミングを見て、都心の用地取得を積極的に進めるという同社の投資基準がある。
同社では、今後もこのような状況が続く限りは、用地取得を継続していくようだ。また、地方の4倍の投資効果がある東京都心において、一番稼働率が高く見込める客室数150室前後の規模を基準としたホテル開発を積極的に進めていく方針だという。
一時は、耐震強度の問題などで取り沙汰されることが多かった同社であるが、その後の景気の低迷などにより不動産業界全体が右肩下がりの状況にあるなか、同社は独自の投資基準に見合う用地取得を着実に進めているのだ。
また、マンション事業においても、ホテル事業同様東京都心3区での供給棟数NO.1をめざし、三番町(東京都千代田区)、水天宮(東京都中央区)、勝どき(東京都中央区)、三田(東京都港区)などの計画地での分譲マンション開発を進めている。ホテル事業、マンション事業ともに、都心3区における今後のさらなる躍進が注目される。(tam)