野村不HDがグループ社員用ラウンジ「ARUMON」開設
野村不動産ホールディングス(株)は、新宿野村ビル(東京都新宿区)の41階にグループ社員が使用できるラウンジ「ARUMON」を2016年10月に開設。グループ社員の“セカンドオフィス”として、会議や執務といったビジネスに、コミュニケーション支援に、イベント開催に、と幅広く活用されているという。取材した。
〔月刊不動産流通2017年10月号『流通フラッシュ』にも同テーマの記事を掲載しています〕
◆“人の成長を促し、会社の貢献につながるよう”
「ARUMON」の開設以前にも、同ビルの47階には16坪ほどの「リフレッシュルーム」が設けられていた。しかし実際には、“主に女性スタッフがランチを食べる部屋”にとどまり。「ランチ以外の利用はほとんどなかった」(同社グループ総務部総務課・林 周秀氏)。
2014年、同スペースの拡張・拡充の話が持ち上がる。“人の成長を促し、会社への貢献につながるような空間に”との目的が掲げられ、社員有志によるプロジェクトチーム(PT)を組成。その後経営陣が、 グループ全社の役員及び職員を利用対象にすること、利用者が使用しやすい新宿野村ビルに開設することについて承認。これを受けて、グループ社員による運営委員会が設置され、これまでにはなかった空間の創出へと検討が進められていった。
委員会のメンバーは他社オフィスを見学したり、それぞれが意見を出し合ったりしてビジョンをまとめていき、こうして16年10月にオープンしたのが「ARUMON」だ。なお、その名称は「“野村”の常識をひっくり返す」という意味を込め、「NOMURA」のアルファベットを逆から並べたことに由来する。
◆予約不要、利用目的は問わず
「ARUMON」は約100坪・約130席からなる大規模スペースで、エリアごとに名称が付されている。プロジェクターが備え付けられていてイベントなどの開催にも活用されるメインラウンジ的な「Answer」、ソファ席などが設けられている「Relation」、軽食やドリンクの販売機などが置かれ、立って、あるいはハイチェアーに腰掛けて気軽に会話できる「Network」、会議スペースとして活用しやすい「Unique」、集中して作業できる「Original」、ライブラリーやLaboとしての機能を併せ持つ「Mad」で構成されいる。どのエリアも予約などは必要なく、また利用目的は問わない。土日も含めて午前7時から午後10時まで、好きなときに入室して、好きなように使って良いとされている。
次のアポイントの時間までをここで過ごす人、サテライトオフィスのように活用する人、ランチをとる人、おしゃべりを楽しむ人、集中して作業する人、ドリンクを飲みながら気分転換する人…。さまざまな利用目的を持って人がここに集まり、そして自身のデスクに戻ったり、外出したりしている。
◆トークイベントやバーイベントなどを次々企画
今でこそ時間によっては満席というほど利用度合いが高いこのスペースだが、「当初は利用者が少なかった…」と述懐するのは、グループ総務部総務課の田上志保氏。
16年10月にオープニングパーティを開催してスタートした「ARUMON」だが、当初は利用者もまばら。「この場所の認知も十分にされていなかったようだ」(同氏)と振り返る。
そこで運営委員委が知恵を絞り、次々と周知・利用促進に動いた。従業員が働く曜日、比較的余裕のある時間帯などにずれがある。そこで、誰もが参加できるよう多種多様なイベントを企画。朝は朝食付きのラジオ体操やヨガ、昼はトークイベントやランチ会、カルチャーセミナーなど。夜はパーティやバーイベントなどを企画し、アナウンス。この場所の周知を図っていった。
こうした努力が身を結び、利用者やイベントの参加者は時間の経過と共に増加している。
◆「グループ交流が増えた」「働きやすくなった」の声が
「ARUMON」開設以降、グループ会社間の会議や打ち合わせは「ARUMON」での開催を基本とする認識が広がり、人的交流の活発化によるシナジー創出やイノベーションの発生への期待も高まる。
「これまでは、グループ会社間とはいっても、“他社の人”という意識・印象が強かった」(同氏)そうだが、ARUMONを舞台に顔を合わせる機会が増え、また開放的なデザイン・空間創出も奏功し、グループ企業間のコミュニケーションは着実に向上しているという。
実際に利用者からは「グループ交流が増えた」「グループの一体感を感じられるようになった」といった声が寄せられており、また利用者アンケートでも「休憩・リフレッシュできる機会が増加」(「やや思う」「そう思う」の回答が約70%)、「今までより働きやすい環境になった」(同約65%)と、「ARUMON」の開設により社員満足度が大きく貢献していることがうかがえる。
なお、「ARUMON」のオープンで、働き方にも変化が出てきているという。「『ARUOMN』の利用は個人の裁量に任されています。集中して作業したいとき、お茶を飲んで気分転換を図りたいときなど、時間・理由を問わず使えます。自分のペースで仕事ができるのは、非常にありがたい。仕事の質を上げるためにこのスペースを使う、という意識は定着していると思います」(前出・林氏)。
「部門ごとに一般的な会議室が設けられています。以前はそこで打ち合わせや会議をするのが当たり前でしたが、『ARUMON』の開放的な空間に慣れた今では閉塞感、息苦しさを感じることも。ここは色々話しやすい。社内の打ち合わせもここで実施した方が成果が出るように感じています」(同社コーポレートコミュニケーション部・相澤夏子氏)。
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最近の取材活動において、取材先でよく耳にする経営上の課題が、“コミュニケーションの活発化”だ。コミュニケーションが良くなれば、仕事が順調に回る、会社を辞めたいと思う人が減少する、情報交換がしやすくなる…さまざまな効果が期待できるということだろう。
野村不動産では、グループ社員を対象に上記の取り組みを進めたが、今夏、グループのNREG東芝不動産(株)の所有する「浜松町ビルディング」では、オフィステナント専用に約200坪のコミュニティラウンジをこの夏に開設。昼食時のラウンジとして、日中のセカンドオフィスとして、イベントの会場として活発に活用されているという。テナント従業員からは、非常に好評だという。
こうした“コミュニケーション活発化”をサポートする取り組みは、働き方改革の進捗と相まって、今後さらに広く求められるようになるはずだ。(NO)
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